河尻亨一さん、企画っていったいなんでしょう?

Blabo!編集部
2014.03.05

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仕事をする上で「企画」は欠かせないもの。これだけ一般的に使われている言葉なのに、その定義は人によってまちまちだったりする。

「Blabo!企画談義」は、Blabo!代表 坂田直樹が「企画って何?」という質問を投げかけるところからはじまる対談企画。言葉の定義から、企画の立て方、良い企画とは? など、『企画』について徹底的に談義していきます。

記念すべき第一回のゲストは、編集やライターとして活動を続ける河尻亨一さん。現在は東北芸広大の客員教授をはじめ、編集、ライターなど幅広い分野で活躍しています。広告や出版など、クリエイティブ業界を股にかけ活動している河尻さんにとって、企画とは一体どんなものなのでしょうか。

プロフィール

河尻亨一 / Kouichi Kawajiri
銀河ライター/東北芸工大客員教授 原稿書いたり、取材したり、企画したり、イベントやったり、教えたり。色んなところをウロウロしてます。歳をとるにつれヤンキー化していくのが悩ましいです。

坂田直樹 / Naoki Sakata

株式会社Blabo代表取締役。1歳〜7歳までニューヨークで過ごす。外資系消費材メーカーマーケティング部門にてブランド戦略立案、新商品開発に従事。シャンプーからウェブサービスのプロデュースへ転身し、株式会社エニグモ プロデューサーとして新規事業立ち上げ後、Blabo!創業。

河尻さん、企画っていったいなんでしょうか?

坂田今回はBlabo!の企画談義の記念すべき第一回となりまして、ぜひ河尻さんにお話を伺いたいなと思い、声をかけさせていただきました。

河尻こちらこそ、ありがとうございます。Blabo!、先日参加させてもらいましたよ。スゴいよね、あれはおもろい。みんな楽しそうに書いているから、つい自分も書いちゃおうかなと思うよね。あと、Blabo!(アイデアに対するイイネのようなもの)付くと気持ちいいよね(笑)。それに、Blabo!は企画がおもしろいね。この間はガリバー×生活者で大型店舗を作るとかコラボレーションをさせる装置みたいだね。

坂田ありがとうございます。Blabo!はふだん絶対に出会わないはずの企業と生活者のコラボを生み出す仕組みになっています。なので、鹿児島の主婦とガリバーの事業責任者がフラット企画会議をしているなんてことが当たり前のように起こっています。僕たちの強みは、普通に生活していたら起こりえない『掛け合わせ』を生み出す設計ができたことです。

河尻なるほどー。どうやって、企業と生活者というあまり交わりのない二者を掛け合わせているの?

坂田そうですね、Blabo!は、誰でも企画会議に参加できるオンライン上の企画会議サービスです。アイデアを出したり、企画をつくるっておもしろいじゃないですか。でも、企画づくりって会社の中で限られたメンバーがクローズドでやっているので普通の人はなかなか参加することができない。一方、企業側も幅広くアイデアを集めたり、生活者の声を聞きたいというニーズはすごいあるんです。そこで、Blabo!は企業や行政の本当の企画会議をウェブ上に公開して誰でも参加できるようにしたんです。そしたら、アイデアを出す機会があまりなかっただけで本当は切り口の鋭い人たちが集まって今のようにアイデアが生まれる場所になりました。

河尻お互いのニーズが交わる場所をつくったんやね。先ほどからキーワードになっている『掛け合わせ』が、僕も企画のポイントになると考えています。

坂田なるほど、教えていただきたいです。河尻さんの講演を聞いたときに、河尻さんは、ひとつひとつの言葉を自分で定義することで使い勝手のよい部品にしていると感じました。例えば、編集はレ点を打って『集めて、編む』ことと説明していて納得がいきました。河尻さんの『企画』についての考え、楽しみです。

企画とは掛け合わせである。

河尻それは光栄ですね。大体ね、良い企画は組み合わせなんですよね。だから、純粋にオリジナルなアイデアというのはインターネット作りましたとか、宗教作りましたとか、そういうレベルなんです。そんなものは人類史上でも数える位しかなくて。世の中にあるすべてのものは、大体何かと何かの組み合わせっていうことが、まず企画をするときの一番基本の考え方だと思います。

坂田まさしく。その組み合わせの妙にセンスや時代を理解しているかのレベルが現れますよね。企画にとって組み合わせが肝というところ、もう少し詳しく聞きたいです。

河尻企画する上で、もっとも簡単なのが『名詞×名詞』という考え方。最近だとガリガリ君のシチュー味、あれはガリガリ君というソーダ味をメインとしたアイスと、シチューとの意外性がまずあるじゃないですか。その組み合わせの妙によってPR効果が生まれる。『名詞×名詞』でも、意外性を伴うことでコミュニケーションのスピードが、ものすごく早くなるし、浸透度も高くなっていくんですね。あのー、半沢直樹の『倍返し饅頭』ってのがあるんですが、これがいい例。難しく考える必要はなくて、半沢直樹が流行って「倍返し」という言葉がブームになったと。そこに、日本の土産の定番であるまんじゅうを掛け合わせる。今一番受けている動画コンテンツと、日本の昔からある伝統的なお土産の代名詞である饅頭を組み合わせたら、これが今はもう買えない位の人気ですよね。

坂田ガリガリ君はコラボレーションしやすい商品設計ですよね。今ではガリガリ君×◯◯をみんな楽しみにしちゃっている。シチューやコーンポタージュ味がヒットした背景には、世の中の時代や状態も影響していると思います。『お願い!ランキング』のちょい足しなど、既製品に変な味を掛け合わせるカルチャーが日本に生まれてきた時代に、ガリガリ君は掛け合わせたからこそ、受け入れられたと捉えています。最近では、商品以外でも、企業もすごいコラボしてますもんね。なんでこんなにコラボブームになっちゃったのでしょうか?

河尻コラボレーションブームっていうのが2000年台後半からありましたよね。以来、色んなコラボレーションが生まれているけど、要するに全く新しい価値が作りにくくなっているんですよ。モノがない時は新製品がオリジナルだったけど、情報もモノも飽和した時にどうなるのか? その時に別の価値や新たなマーケットを作るためのコラボレーションなんですよ。

坂田今ってもう、そのコラボレーションさえも飽和していますよね。ビックロにしても、強者同士の組み合わせだからこそ、インパクトが大きかったと思います。企画ってお金をいくらかけたかではなく、考える力勝負する力だと思っています。弱者こそが使うべき考え方と捉えたときにコラボをするだけでは難しいですよね。それではインパクトを出せない。コラボレーションの消費が加速しているなと感じています

コンセプトとは、妊娠。

河尻それはそうやね。もちろん、ただ『名詞×名詞』で組み合わせているだけじゃ新しさも生まれない。ちゃんとターゲットのニーズや時代の気分と、自社の商品やサービスを掛け合わせないといけないよね。例えば、2000年代前半にリノベーションが注目を浴びた時に、その物件を探す術はなかった。そこで生まれたサービスがリノベーション×不動産検索サービス『東京R不動産』。それから数年経ち、シェアの時代が来たときに、その物件を網羅してほしいというニーズがかけ合わさったシェア専門の不動産『ひつじ不動産』が生まれた。これは、『時代×状況』なる。組み合わせは何のためにあるかというと、価値をクリエイトするためにあります。単に組み合わせたらヒットするわけじゃなくて時代、ニーズに対して、自分の売り物を当てていくところで掛け合わせが必要なんです。

坂田すごい納得感があります。コンセプトを辞書で調べると語源が『受胎、妊娠』のConceptionに行き着くんです。これ見てハッとしました。つまり、自社の商品(精子)と買ってくれる人(卵子)が結びつかない限り、いいコンセプトではないと。結びつけるものがコンセプトなんだと理解しました。企画も同様に時代に対して、自社の商品やサービスを正しく掛け合わせることが糸口なのではと理解が深まりました。

(次号へつづく)