Blabo!ユーザーの声から、コンクリートでできたiPhoneスピーカーが実現しました!

鳥取県
2018.09.12

鳥取県でコンクリート製造会社を営む「郡家コンクリート」。この会社の強みは「他社が作らない製品を作る」という理念です。多くのコンクリート会社が工事現場で使われるJIS規定品の大量生産を行う中、「郡家コンクリート」はクライアントと二人三脚でオリジナル商品を作り続けてきました。

今回は、代表取締役の山根さんに、Blabo!で開催した企画会議の感想や商品実現に至るまでの経緯をお伺いしました。

Concrete_yamanesan

コンクリート好きは意外と多い?

郡家コンクリートがBlabo!が鳥取県と一緒に進めている「とっとり『と』」プロジェクトに参加したのは2015年。「もっと生活者視点に寄り添った、身近な商品を作りたい!」という願いから、Blabo!でこんな企画会議を開催しました。

「インテリアショップにあった、コンクリートでできた商品。どんな商品なら家に置いてみたくなる?」

重い、冷たい、固いイメージが強いコンクリートですが、出てきたアイデアを見てみると、実はその質感が好きな人は多いよう。無機質で無骨な見た目はシンプルなインテリアにしっくりくる上に、最近はコンクリート壁をそのまま残すデザイナーズマンションなども増えてきています。コンクリートは、意外にも生活者にとって身近な存在になってきていたようです。

企画会議で出たアイデアを読んでいて山根さんが驚いたのは、ユーザーの皆さんが、コンクリートの特徴をしっかりと理解しているところでした。

「皆さんのアイデアはどれも発想が面白かったですね。月球儀やドカンのアイデアは全く予想していませんでした。でも一番びっくりしたのは、熱に耐えられる、冷却できるといったコンクリートの性質を皆さんとてもよくご存知だったことです。」

そんなコンクリートを特徴を活かしたアイデアが、ken1さんの「AVラック+スピーカー台」でした。可能性を見出した山根さんは、早速試作品作成に取り掛かりました。

ネックはコンクリートの重さと厚さ…

山根さんがまず思いついたのが、組み立て式ラックです。きっと皆さんの中にも、組み立て式のラックを使ったことがある人がいるかもしれません。お好みの幅や高さのパーツを選び、自分で組み立てる便利なラックで、ホームセンターなどで売っています。素材はスチールや木材が多いのですが、山根さんはこのコンクリート版を作ってみることにしました。

ところが、試作品はあまりにも重く、一人では持ち上げられないという結果に… 確かに、コンクリートには、強度を保つために中に鉄筋が使われていて、一枚の厚さは最低10cmもあります。これを何枚も使うとなると、ラックが相当の重さになってしまうのです。

Concrete_concretecarbonfiber

結局、コンクリートの重さと厚さのハードルをクリアしないことには、ラックは作れないという結論に至りました。そこで山根さんはコンクリートの構造と素材を一から見直すことにしたのです。

2年の研究と試行錯誤の末に完成したのが、HPC工法を用いた軽くて薄い新しいコンクリートです。以前は10cm以上あったコンクリートが約3cmにまで薄くなり、重さも以前の1/3に!女性でも持てる程の什器を制作できるようになりました。

おしゃれで温かみのあるコンクリートのスピーカー誕生!

この新しいコンクリートで作ったのが、今回実現にいたったiphoneスピーカーです。この商品は、ken1さんが出してくれた「AVラック+スピーカー台」のアイデアからヒントを得たそうです。

確かに、ken1さんのアイデアには「今後の課題として、重さに関して、コンクリートの厚さや化合物のコントロールにより、家具として軽量化や模様(着色や木目調)などに仕上げることができないかと思います。」という言葉がありました。まさに、このアイデアを実現する商品が出来上がったのです。

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高さ30cm、幅12cm、奥行き17cmのコンクリートの“箱”の中には、トランペットのような管の穴が空いています。iPhoneで音楽を流すと、音が管を通り反響するという仕組み。温かみのある木と組み合わせることで、落ち着きのあるデザインになりました。

さて、実際の重さはと言うと、5〜6キロ。女性でも運べる重さです。展示会に来ていたお客様は「ブックエンドとして使えるかも」と言っていました。

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展示会には横長のスピーカーも置かれていました。シンプルなデザインに思わず「欲しい!」と言うお客様もたくさんいらっしゃり、コンクリート商品の可能性が広がります。

アイデアからは新技術も生まれる

軽くて薄い新たなコンクリートのおかげで、コンクリートの用途の幅が一段と広がったようです。山根さんは、これまでコンクリートがあまり使われていなかったエリアからも仕事の依頼がくるようになったと言っています。

例えば、ウィンドウディスプレーやホテルのロビー用の什器。シーズンごとに変えることが多い場でも、軽くて薄いコンクリート什器なら、簡単に運ぶことができます。さらに現在は、ドアや窓といった動かすことを前提にした建築什器の依頼などもあり、手応えを感じているようです。

Concrete_color

Blabo!のユーザーさんからいただいたアイデアがきっかけとなり、新たな技術が実現したのは私たちも初めての経験です。
おかげでより身近になったコンクリート、これからはもっといろんなインテリア商品が増えていきそうですね。