<高橋智隆さんインタビュー>第2回:「ニーズ」や「用途」から、イノベーションは生まれない。

経済産業省
2016.02.25

経済産業省とBlabo!が主催する「みんなのロボットプロジェクト」。第1回に引き続き、ロボットクリエイター・高橋智隆さんのインタビューから、これからのロボットの可能性を探ります。表面的な顧客主義に疑問を投じ、「究極のエゴイズムの先に市場はある」と言う高橋さん。さらには、「商品開発にユーザーのニーズは必要ない」と主張します。Blabo!代表の坂田が、その真意に迫ります。

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プロフィール

高橋 智隆さん
1975年生まれ。株式会社ロボ・ガレージ代表取締役、東京大学先端研特任准教授、大阪電気通信大学客員教授、ヒューマンアカデミーロボット教室顧問。

高橋さん:商品開発をするときに気をつけているのは、「どうしたらいいですか?」と教えを請う姿勢にならないこと。そのためにも色々な情報をフラットに見て、判断するようにしています。

坂田:具体的に伺ってもいいですか?

高橋さん:例えば僕は、人が自分のロボットにどうリアクションするかすごく興味があります。そのときに、「このロボットが好きですか?」「いくらなら買いますか?」など、ユーザーに意見を聞いていたのではだめ。そうではなくて、あくまで事象を観察した上で、「ここが受けた」「伝わらなかった」と分析することが大事だと思います。

坂田:自分で判断する。

高橋さん:はい。まずは、数字やユーザーのリアクションという「データ」を見ます。その上で、データが意図するところを、あくまで自分の感性や価値観で解釈し、開発を進める。そうすれば、先を読んで進化し続けることができると思います。

坂田:人の言葉ではなく、本音を観察するということですね。私たちも、企業や地方自治体と一緒に商品開発を行うときには、ユーザーが発する言葉が、建前なのか本音なのかをしっかり見分けるようにしています。ユーザーからアイデアも募集しますが、最終的に思考するのは、担当者や私たち。たくさんある情報の中からどの本音を切り取るかは人の感性だと思っています。高橋さんは、その感性をどうやって磨かれてきたのでしょうか?

高橋さん:作っていくうちに気づくことってたくさんありますよね。技術もそうですが、人のコミュニケーションもそう。やってみないとわからないことだらけです。僕の場合は、その試行錯誤を創業以来、15年近く繰り返してきました。

坂田:ロボ・ガレージは、今も一人で運営されているんですよね。

高橋さん:そうですね。社長である僕が一貫して、デザインはもちろん、部品の加工、組み立て、塗装、プログラミング、さらには最終的なプロモーションにも携わっています。全部を知っているからこそできるというか、全部を知らないと何もできないんです。ある程度歴史があって構造が決まっている分野、例えば、自動車業界だと、構造も部品も、販路も法律も決まっているから分業ができます。でも、ロボットについては、そうはいかない。

坂田:そういう意味でも、まったく新しい市場をつくることのハードルは高そうです。

高橋さん:この業界でも、特定の産業やサービス業の現場で使うためのロボットの開発については既存業界に近いかもしれません。これまで人がやってきたことの代替、例えば食品工場で玉ねぎを剥く機械みたいなものですね。

坂田:では、新しい市場とは?

高橋さん:現在、人も機械もやっていないことを新しくつくりだす分野ですね。例えば、YouTubeやFacebook、Twitterもそうですが、これらは何かを代替するために開発されたわけではありません。

坂田:もとになるものが、何もなかった。

高橋さん:はい。ましてや「こういうものがほしかった!」とみんなが思っていたわけでもないから、ニーズもなかったわけです。何のために必要なものかよくわからないものを勝手に作って、見せびらかしていたら、みんなが賛同して使うようになる。みんなが使うようになると、「これ、こんなことにも使えるよね」という気づきがあとから生まれてくる。

坂田:ニーズがないところからイノベーションは生まれると。

高橋さん:ニーズどころか用途すらない、それこそが先進国型の産業創成だと思うんです。つまり、困り事解決ではない。洗濯桶の水が冷たくてかわいそうだから全自動洗濯機をつくろう、という発想はもはや前時代的です。日本はまだそこから卒業できていない。

坂田:今後の日本の産業全体の課題と言えそうです。

高橋さん:はい。「好きだから」「楽しいから」でイノベーションが起こせるのは、経済的なゆとりや文化的な豊かさがあるからできること。ロボットについても、新しいジャンルを開拓するためには、何かの用途に直結していないもののほうが可能性はあるのではないでしょうか。

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第3回に続きます>