<高橋智隆さんインタビュー>第3回:ロボットクリエイター・高橋智隆の「市場の引き寄せ方」

経済産業省
2016.03.01

経済産業省とBlabo!が主催する「みんなのロボットプロジェクト」。第1回第2回に引き続き、ロボットクリエイター・高橋智隆氏のインタビューから、これからのロボットの可能性を探ります。第3回、ついに話は核心へ。数々のロボットをヒットさせてきた高橋さんが考える、「市場を引き寄せる」戦略とは。

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プロフィール

高橋 智隆さん
1975年生まれ。株式会社ロボ・ガレージ代表取締役、東京大学先端研特任准教授、大阪電気通信大学客員教授、ヒューマンアカデミーロボット教室顧問。

坂田:前回、ニーズがないところからイノベーションを生むことこそが、先進国型の産業創成だというお話を伺いましたが、産業創成を目指す上での日本の課題についてご意見をお聞かせいただけますか?

高橋さん:ユーザーは慎重だし保守的です。だからこそ、ユーザーをうまく誘導して購買につなげるための戦略が必要なのに、その戦略の立て方が日本は下手です。

坂田:商品のならし期間がないまま、市場にぶつけてしまう、ということでしょうか。

高橋さん:ならしというか、ステップだと思っています。例えばイーロンマスク氏はそれがうまい。電気自動車事業を始める際、まずテスラロードスター(スポーツカータイプの電気自動車)を売ってお金をつくり、そのあとに本格的なセダンを出して量産型のビジネスにつなげ、事業として成功させました。

坂田:一方で、日本企業も電気自動車をつくってきましたよね。

高橋さん:日本企業が何をやったかと言うと、エコでクリーンでしかも実用的な自動車にしようということで、最初から500万円の電気軽自動車をつくってしまった。500万円の自動車って明らかに高いですよね。一方で、テスラロードスターの1200万円は、「スポーツカーとしては」断然安いんです。

坂田:日本の技術が劣っていたというわけではないんですね。

高橋さん:イーロンマスク氏には未来に向けたビジョンがあり、そこに向けて刻んでいくべきステップが戦略としてありました。保守的なユーザーにとっても、現状から飛躍することなく、安心して踏んで行けるステップです。

坂田:そういった事例が他にもありそうです。

高橋さん:お掃除ロボのルンバもまさにそうですね。突然掃除ロボットを開発して、10万円、20万円で売っても、誰もお金を払わないでしょう。iRobotは、はじめは玩具として市場に出しました。数万円のクリスマスプレゼントとして、いわばジョークグッズ的に売り始めたんです。ユーザーは実用性を期待せずに買ったのですが、意外にゴミが取れている事に気付く。それを見計らって本格的な高価格のルンバを売り出しました。

坂田:思い切りましたね。

高橋さん:そうなんです。すごく賢い戦略です。ロボットもそういうステップを踏んでいかなければ、未来のビジョンを掲示していても誰も近づいてきません。

坂田:高橋さんのケースでいうと、Robiがコミュニケーションロボットの市場をつくる最初のステップだったのでしょうか?

高橋さん:そうですね、Robiは割り切りのロボットだと思っています。ネットに繋がらない、パソコンにも繋がらない。スタンドアローンで、ドライバー1本で組み立ててもらう。自分でプログラミングすることもできません。デアゴスティーニの週刊という仕組みを使って、創刊号は790円、第2号以降は1990円で売り出しました。人は得体の知れないロボットにいきなり15万円は払わないけど、分割にするとお試しができる。数号買って面白くなければ止めればよい。もうひとつ、Robi成功のポイントは、普通の人には接点の無いロボット専門店ではなく、本屋で売られたところです。

坂田:漫画を買いに行ったらロボットを買っていた。生活者にとっても新鮮な体験ですね。

高橋さん:そうなんです。ただ予想していたよりも多くの人が手に取ってくれて、継続率も非常によかったんです。創刊号からの継続率は半分以上。国内だけで200億円の売り上げでした。

坂田:この継続率の高さは、潜在顧客の多さの表れですね。

高橋さん:はい、ここに市場があることを示したし、買ってくれるユーザーが「お話するロボットってありだよね」と思ってくれた証だと思います。例えばスマホのSiriには喋りかけないけど、擬人化されたロボットには話しかけようと思う。自分の感情、本能的なものだと思うんですが、実際に使ってみてはじめてそこに気づく。

坂田:次のステップももうすでにあるのでしょうか?

高橋さん:ロボホンという電話機能を搭載したロボットを開発しています。初期投資としてRobiのように価格を1000円に設定することは難しいですが、ある程度抑えて、月々の支払いで補えるようなモデルを考えています。ロボホンは電話なので、携帯ショップに置いてあって、他の携帯電話と同じ支払形態で払える仕組みです。

坂田:ロボット専門店に行き、ロボット代として何十万円を一括で払うことは、普通の人にはできません。

高橋さん:いきなり暮らしの中にロボットを導入してくださいと言われても、誰だって困惑しますよね。ロボホンは電話機なので電話として持ち歩いてください、と言えます。電話として使えるし、メールも送れる。地図も見られるし、写真も撮れる。

坂田:プレゼンで滑ったときに、代わりに謝ってくれるかもしれない(笑)。

高橋さん:そういう使い方もありますね。従来の電話機の機能として使いながら、「ああ、ロボットだとこんないいことがあるよね」というところに気づいていってもらいたいです。ユーザーの生活に浸透させるためにはそういう方法しかありません。今のみんなの価値観や暮らしの延長線上に、未来を、ロボットのような遠い存在を近づけていく。そのためには、そこに進めるように、ちゃんとした階段をつけることが必要だと思っています。

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第4回に続きます>