<高橋智隆さんインタビュー>第4回:スマホの未来は人型ロボット?

経済産業省
2016.03.07

経済産業省とBlabo!が主催する「みんなのロボットプロジェクト」。第1回第2回第3回に引き続き、ロボットクリエイター・高橋智隆氏のインタビューから、これからのロボットの可能性を探ります。第4回は、数々のロボットをヒットさせてきた高橋さんが考える「市場を引き寄せる産業創生」についてお話をうかがいます。

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プロフィール

高橋 智隆さん
1975年生まれ。株式会社ロボ・ガレージ代表取締役、東京大学先端研特任准教授、大阪電気通信大学客員教授、ヒューマンアカデミーロボット教室顧問。

坂田:ロボホンについてお話をうかがってきましたが、電話というデバイスの未来についてどうお考えですか?

高橋さん:薄型テレビ、パソコンと同じように、スマホも完成してしまったデバイスだと思います。だからこそ市場全体としては、無理やりにでも次の形を考えないといけないフェーズに来ています。

坂田:メガネ型や時計型のものが出てきていますね。

高橋さん:僕は、やはり人型じゃないかと思っています。スマホは完成しているけど、唯一の欠点は、せっかくある音声認識機能をみんなが使わないことです。あの四角い機械に向かって声をかけたいと思う人はなかなかいませんよね。だからこそ、人型なんです。喋りかければ情報が取れるから、それを活用したサービスが返せる。そもそもスマホのアプリはもう飽和していて、似通った内容にもうユーザーは飽きてしまった。クリエイターがまた思う存分アイデアを注ぎ込める新しいプラットフォームになることを目指しています。

坂田:その背景にはどのような思いがあるのでしょうか?

高橋さん:愛犬に話しかけるように、人の感性、心の琴線にふれる、機能や性能とかけ離れた奥深いものを作っていきたいと思っています。例えば、フェラーリは性能以上に、フェラーリという存在そのものに対する憧れや敬意といった魔力的な魅力があります。デバイスについても同様に、人を本能的に惹きつけるものを目指したい。

坂田:日本人は嗜好品をつくるのが苦手ですが、新しい市場をつくっていくときには、嗜好品から出していくことが大事かもしれませんね。みんなが日用品を目指してしまうから、新しい市場を作れない。

高橋さん:ヨーロッパに行くと「ああ、市場をつくるってこういうことなんだな」と思うことがあります。カンヌ映画祭や広告祭、バーゼルアートフェアもそう。システムをつくった人がいて、それを牛耳る。「場」をつくっている、いわば胴元的な人が、歴史の長いヨーロッパにはたくさんいます。

坂田:投資家と企業家のエコシステムですね。

高橋さん:コンテンツを作っている側は、プラットフォーマーには勝てません。例えば秋元康氏はAKBがなくなっても次のものをつくれます。日本人が、唯一プラットフォーマーになれそうなのは、ポップカルチャー。それ以外は、どこかで誰かが提案し、管理する場の中で、いい車つくりました、いい映画つくりましたという話ばかり。「場をつくる」ことの先に、ロボットの未来があると思います。

坂田:コンテンツではなく、プラットフォームとしてのロボットにしていきたいというお考えですか?

高橋さん:できることなら、現時点で支配的なプラットフォームであるスマホにとって代わるものにしたいですね。90年代はゲーム機、現在はスマホ、その次はロボットがプラットフォームになるという未来を期待しています。

坂田:プラットフォームということは、ユーザーが自分のニーズに合わせてロボットを作ったり、使ったりできるような時代が来るということでしょうか?

高橋さん:ある程度の制約をかけつつオープンにしていくのが理想ですね。スマホのアプリと同じような仕組みを考えています。その場のルールをつくることで、結果的にみんなが気に入って、生活の一部になればと。

坂田:高橋さんがクリエイターからプラットフォームに目が向いたのはいつからですか?

高橋さん:昔は、ロボットをつくってメーカーに採用される、それだけで嬉しかったんです。でも、よく考えると、これって次につながらないんですよね。結果的にあまり売れなかったときに、自分だったらこうしたい、もっと売れるのに、と歯がゆかく思う気持ちが湧いてくる。あるいは自分がつくった一台はいいんだけど、量産になると出来映えが変わってくるから、量産試作までやらせてほしい。そうなるとCMも、発表会も全部自分でやりたくなる。自分の一部を提供するだけではなく、製品のさらに先のシステムや場まで築きたいと思うようになったんです。

坂田:その原動力を教えてください。

高橋さん:源にあるのは、自分の理想とするロボットを実現したいという思い。プラットフォームを作って場を支配することが目的ではなく、自分が思ったとおりのロボットを作って、世に問うてみたい。そこが人より強いのだと思います。

坂田:高橋さんのクリエイティビティで新しい市場を作り出すということなんですね。

高橋さん:市場に合わせるというよりも、市場を引き寄せたいと思っています。例えば、ロボット車椅子を作りましたと言っても、今まであった車椅子にとって替わるだけで、新しい産業が生まれるわけではありません。そうではなく、産業としての新しい価値の創出を目指していきたいですね。

坂田:なるほど、市場を引き寄せるには、「好き」という情熱と、それを実現するための緻密な戦略が重要ということですね。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

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<完>