あなたも、アイデアひとつから参加できる鳥取県の企画会議!?

鳥取県
2016.08.03

地方に旅行に行くとどこかで見たような既視感に襲われることがある。このお土産どこかで見たような?と思える似た商品だったり、ほとんど同じ饅頭に観光地のロゴが付いていたり。

もちろんそんな商品もあるのだが、中には素材に工夫があったり、作り手に話しを聞いてみると先代から続くストーリーに深みのある商品も多数ある。ただ、地方には美味しいモノが溢れているのに、今ひとつベストセラーになりきれていない商品は少なくない。素材はいいのに、伝えきれていない惜しい商品や観光地がたくさんあるのだ。

そんな課題を抱える地域は多くあるが、鳥取県は他の地域とは違う行動をとったのだ。

それが「とっとりとプロジェクト」だ。鳥取「と」一緒に未来の鳥取をつくる「とっとりと民」にアイデアひとつから誰でもなることができるインターネットの力を最大限に活用した仕組みだ。

今年で3年目の取り組みとなり、すでに参加した13社の企業がこの仕組みを活用して、2609個を超えるアイデアが寄せられ、続々とヒット商品が生まれている。

とっとりとプロジェクト

たとえば、お餅専門店の「いけがみ」は正月にしかお餅が売れないことに悩みこのプロジェクトに参加した。通年で売れる商品を作るためにはどうしたらよいか、全国の生活者と企画会議を行ったのだ。1年を通して売れる商品にしたいと目論んでいた厚さ4ミリメートルの薄いスライス餅。現状は冬に鍋で利用されるシーンに限定されていた。しかし、スライス餅は薄いのでお湯に入れるだけでとろける。鍋以外でもいろんな使い道がある予感があった。

とっとりとプロジェクトの仕組みはシンプルだ。あなたも考えてみたくなるようなお題が出されるのだ。トイレの中でも通勤電車でも、アイデアが思いついたらいつでも投稿できる、いわば“どこでもドア付き” 企画会議室なのだ。

投げかけられたお題は『スライスされた薄いお餅が、あなたの食卓にも並ぶ食品に!どんな食べ方や使い道を提案されたら欲しくなる?』というもの。

「好きなアイスを包んで、オリジナル雪見だいふく。自分で好きな味のアイスをお餅に包んで、オリジナルの雪見だいふくに。アイス好きにはたまりません!」

「忙しいビジネスパーソンも日常で食べそうな朝ご飯のスープにスライスお餅をのせて腹持ちをよくする」

など、瞬く間に全国の生活者から数百個のアイデアが投稿された。さらに、毎日食べてもらえるようなお餅のネーミングを募集したところ『毎日がもちようび』というネーミングが生まれ採用されたのだ。このストーリーはソーシャルメディアでもテレビでも話題になり、なんと食品宅配大手オイシックス(oisix)からも受注が決まり売上が5倍になったのだ。

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また、鳥取の山奥にある三朝温泉もこのプロジェクトを通じて、新しい自分たちの価値に気づいた。三朝温泉は、日本遺産に認定された温泉。世界屈指のラジウム温泉として、湯治や癒しの体験ができる場所だ。ただ難点はアクセスがそこまでよくないことと、電波が入りづらいという現代人にとってはデメリットもあった。しかし、オンライン上の企画会議では、電波が入りづらい場所に行きたいというニーズが強かったのだ。 人気が高かったのは「デジタルデトックスの旅」というアイデアだ。現代人にとっては「つながっていること」が中毒になっているけれど、実は「止まる時間」への需要が高まっていたのだろう。「止まる時間」があるから、動くことができる。多くの生活者が潜在的に求めていたアイデアだったのだ。

このアイデア、長年旅館に勤めているスタッフ視点だけでは出てこないものだった。生活者の声から、鳥取の三朝温泉が提供できるのが「何もしない贅沢」だということに気づいた瞬間だった。そこで開発した商品が、「何もしない贅沢」を満喫する旅行プラン、「デジタルデトックスプラン」。さっそくプランの応募者もあり、現在も利用可能だ。

デジタルデトックスプラン

おかげさまで「とっとりと」プロジェクトはグッドデザイン賞、全国知事会の先進政策大賞を受賞するなど、仕組みそのものも高く評価され、今年で三年目を迎える。

とっとりとプロジェクト発起人である鳥取県県庁の井田広之さんはこう語っている。

鳥取県県庁の井田広之さん

(写真右が井田広之さん)

鳥取県内の中小企業支援にかかわってきた私には、地元企業からこんな相談が寄せられていました。『何が求められているのか、どんな商品を作ったらいいのかがわからない』

「ものづくりの技術はあるけれど、新商品開発の経験が少ない。また地域産品は品数が多いので、埋もれがちだという問題点も。鳥取県としてなんとかサポートできないかと模索していましたが、補助金という支援だけでは足りないと感じていました。そこで、県外の消費者の声を集めて、魅力的な商品を作れないかという想いがあり、生活者のアイデアを直接聞くことができるBlabo!さんの力を借りて、この 『とっとりと』プロジェクトを始動したんです。 2年間で成果が生まれて、ますます変化していくことの実感、ワクワク感が地元に生まれています。鳥取の外からのアイデアが、鳥取を変える。みなさんの声を、お待ちしています!」


とっとりとプロジェクト https://bla.bo/teams/tottori